≪健康診断で上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行して肉眼的に慢性胃炎、萎縮性胃炎を診断され、 血中ピロリ菌抗体が陽性なので、ピロリ菌の除菌治療が必要と指示されて初診される患者様に対しての注意事項≫ |
*血清抗体法を用いたヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染診断に関する注意喚起 こちらをご覧ください |
血中ピロリ菌抗体陽性でも抗体価が高くない方は現在感染していない場合がございます。 尿素呼気試験でピロリ菌感染を確認してから除菌治療を行う必要があります。 診察まで空腹(食後6時間以上、水のみ可)の状態でお待ちいただくよう御願い申し上げます。 |
初診で診察を待っている時間に外出して、食事をしてしまったので、尿素呼気試験ができず、そのことをご説明したところ、 「それなら、なんで食べちゃいけないと言ってくれないのだ!」とご立腹された方がおりました。 PS:消化器科を初診される場合、空腹で来院されると、たまにいいことがあります 医療法人社団 晴博会 あんこうメディカルクリニック 理事長・院長 安康晴博 |
当院は豊富な除菌経験が有り、除菌成功率はほぼ100%(最近の五剤併用療法変法900例はほぼ100%)です。 |
![]() |
H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医 院長 安康 晴博 平成21年11月、日本ヘリコバク ター学会第1回認定試験(平成21年6月26日開催)に合格し、審査を経て認定医を取得致しました(認定番号:00040号) |
*ABC検診は自費3,000円(税込) 採血検査をするだけです。ABC検診は「ピロリ菌感染の有無を調べる検査」と「胃炎の有無を調べる検査」を組み合わせて胃がんになり やすいか否かをリスク(危険度)分類するものです。 「がんを見つける検査」ではありません。 |
|
![]() |
ひとりひとりの「胃の健康度」を調べて胃がんになる危険度がきわめて低い人たち(超低リスク群)を精密検査から除外、危険度の高い人 たちは胃がんがないかどうかを確かめるために精密検査(内視鏡検査など)を受けていただく検査です。 |
ABC検診は、この超低リスク群=「ピロリに感染していない人(未感染者)」を胃がん検診の対象から除外できる点に大きな意味があります。 ABC検診の最大の注意点は、A群にピロリ菌既感染者、現感染者が混入することがあることである。 その最大要因は除菌治療であり。その既往について丁寧な問診が必須である。 という発表がありました。 第25回日本ヘリコバクター学会学術集会(2019/6/21〜6/23)シンポジウム1-2 偽りのA群:A群のうち偽A群は10〜20%存在するといわれております(除菌後や自然除菌後、あるいは 現感染者もA群に含まれる)。 第22回日本ヘリコバクター学会学術集会(2016/6/24〜26)において、「陰性高値でも早期胃癌が2人発見された。抗体価3.0U/ml以上で内視鏡検査を積極的に行うべきである」という発表がありました。 第23回日本ヘリコバクター学会学術集会(2017/6/30〜7/2)において、「ABC検診:A群または便中ピロリ菌抗原(-)でも、PGI:31.2ng/ml以下、 PG I/U比:4.6以下は上部消化管内視鏡検査が必要」という発表がありました。 現在ピロリ菌に感染している方の約5%が偽陰性者です(血液抗体の感度は95%→5%はピロリ菌に感染しているのに陰性の結果)。 陰性高値(栄研のEプレート法で3〜9.9U/ml)はA群の約2割を占めており、彼らは現在または過去のピロリ菌感染者です。 ペプシノーゲン2高値(PG2が20以上)、PG1/2比低値(4.0以下)、血清抗体が偽陰性のグループは、進行胃癌のリスクが高いので、 検査が必要です。 A群でも一度は上部消化管内視鏡検査を受けるべきです(日本ヘリコバクター学会誌Vol.15 No.2:2014年1月15日から一部抜粋)。 New!・「血清抗H. pylori IgG抗体 検査」の陽性・陰性判定に関する日本ヘリコバクター学会からの注意喚起 *詳細はこちら ・胃がん予防は胃がんリスク検診(ABC検診)から *詳細はこちら New!・胃がんリスク層別化検査 *詳細はこちら |
ピロリ菌検査(ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を検査する)の保険適用は、2000年11月に @「胃潰瘍」とA「十二指腸潰瘍」のみに適応となり、2010年6月18日にB胃MALTリンパ腫 C特発性血小板減少性紫斑病、D早期胃癌ESD後が追加適応となりました(保医発0618第1号:適応追加)。 厚生労働省保険局は(‘13)平成25年2月21日、内視鏡検査において慢性胃炎の確定診断がなされた患者にH.pylori除菌治療の健康保険適用を認めました。 (保医発0221第31号) その意義と目的は大きく、胃・十二指腸潰瘍などの発生した疾患の治療、胃癌を始めとする H.pylori関連疾患の予防、さらには感染経路の抑制です。 1983年に発見されたHericobacter pyloriは上部消化管疾患の病態生理に対する概念を変えたのみでなく実際の診療にも大きな変革をもたらしています。 わが国では定義が曖昧であるために臨床の現場において様々な意味で用いられている胃炎や慢性胃炎については、症状により診断される機能性胃腸症:functional dyspepusia(FD)を明確に区別してピロリ菌の持続感染による組織学的胃炎を中心とした考え方に変わりつつあります。 ピロリ菌感染によって、胃粘膜の炎症が始まり長期間の持続感染を経て萎縮性胃炎に移行することが明らかになっています。 ピロリ菌の除菌によって胃、十二指腸潰瘍の再発がほぼ抑制されることは証明され、現在では胃癌の発生を予防できるかどうかに注目が集まっています。 これまでの研究でピロリ菌感染がない場合に比べ、感染者では20倍以上胃癌のリスクが高いことが明らかとなっています。 除菌することで胃癌リスクが3分の1くらいに減少します。 当院では1994年、平成6年からピロリ菌の各種除菌治療を自費診療で開始し、創意工夫を繰り返した結果高い除菌成功率の実績があります。 現在、一次除菌(三剤併用療法)、二次除菌(メトロニダゾール)は保険診療、三次除菌以降の除菌(他医での一次除菌、二次除菌不成功例など)、ペニシリンによる薬剤アレルギーが有って除菌ができない方は、自費診療(五剤併用療法変法)で行っています。 当院は豊富な除菌経験が有り、除菌成功率はほぼ100%(最近の五剤併用療法変法900例はほぼ100%)です。 除菌治療を行う際には事前に胃内視鏡検査により、胃癌を確実に除外したうえで慢性胃炎 の所見があることを確認する必要があります。 慢性胃炎を正確に診断し、その程度や個々の胃癌リスクなどを評価すること は除菌後に経過観察するうえでも重要と考えられます。 特に胃体部の萎縮性胃炎、前庭部の腸上皮化生、皺壁肥 大型胃炎、鳥肌胃炎は胃癌のリスク群として正確な内視鏡診断が必要とされます。 また除菌成功後でも胃癌発生のリスクは癌年齢に達した成人では20÷3で、未感染者にくらべて7倍以上あると考えられます。 この水準は、胃癌検診が必要な水準です。 成人での除菌成功後には、ピロリ菌感染とは無関係に増殖する能力を獲得する段階に達した胃癌の対策も含めて、定期的な経過観察もしくは検診が必要です。 除菌を実施する患者様には除菌成功後最低一年毎に内視鏡検査をできるだけ長期にわたって受けて戴く ようにお話をしています。 除菌成功後年に1回(推奨)内視鏡検査で10年間の経過観察を怠ってはならないとされています。 最近、「除菌後10年以上経過しても、内視鏡検査によるフォローアップを中止すべきではない。 これまで除菌後の胃癌発症リスクが低いと考えられていた胃粘膜萎縮が軽度の症例も例外ではないとの報告があります。 胃癌の早期発見でさらに死亡を減らすという考えです。 |
![]() 白色光観察
|
![]() LCI観察
|
![]() BLI観察
|
![]() BLI拡大観察
|
*73歳男性、2002年平成14年に(四剤併用療法)にてピロリ菌除菌。 「除菌成功後19年目の経過観察で発見された幽門前庭部小弯の微小胃癌(1〜2mm)です。 病理はAdenocarcinoma(tub1)、免疫染色p53:弱陽性、Ki67:弱陽性でした。 ・ピロリ菌.net *詳細はこちら |
@除菌前 |
![]() |
A除菌後10年 |
![]() |
B除菌後10年強調画像 |
![]() |
C除菌後10年色素内視鏡画像 |
![]() |
DESD後の綺麗になった元病変部 |
![]() |
上部画像は当時64歳男性、ピロリ菌の除菌成功後10年目の経過観察で発見され、 ESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)により完治した症例です。 (2002)平成14年にピロリ菌の除菌施行(三剤併用療法) (2012)平成24年の上部消化管内視鏡による経過観察で胃体中部小弯に早期胃癌腫瘍径11mm 病理:Tubular adenocarcinoma well differenntiated type(tub1) pM,ly0,v0,LM(-),VM(-) ピロリ菌の除菌が成功することが、ピロリ菌除菌治療の終点ではありません、 スタートに過ぎないのです。 1個の癌細胞が腫瘍径10mmに発育するために約10年間要することが知られております。 除菌後長期間(10年以上)経過しても、胃癌の発生がみられることから、 除菌成功後長期間経過しても定期的な内視鏡検査を怠ってはなりません。 年齢に関わらず、除菌が成功することで、慢性胃炎は改善され、胃粘膜が綺麗になることで、 早期胃癌が発見しやすくなるのです。 |
「ノーベル賞受賞者Prof.Barry Marshall」 マーシャル教授の業績はポリオワクチンや天然痘の根絶などに匹敵する消化器病学の最も重大な発見であると認識されています。 ご講演の中で今後ピロリ菌はピロリ菌感染症という認識の下に治療がなされ日本は世界で最も早くピロリ菌を根絶する国になりえると述べられていました。 |
泥沼除菌とは、自己免疫性胃炎(AIG:autoimmune gastritis)で胃酸が少ないと、ピロリ菌(H. pylori)以外のウレアーゼ産生菌が 定着してしまい、除菌をしても13C-尿素呼気試験(13C-UBT)を行うと陽性反応が出てしまい、除菌療法が繰り返されるというものです。 |
![]() 胃体部の著明な萎縮
|
AIGには,H. pylori感染の関与がある場合とない場合があり,両者間で胃体部や前庭部での萎縮や慢性炎症性変化に違いを認めます。 H. pylori感染を伴ったAIGと感染を伴わないAIGを内視鏡で区別するのは難しく、血中H. pylori抗体価や便中ピロリ菌抗原で判断せざるを得ないのが現状です。 いずれも胃酸分泌が著しく低下しており,H. pylori以外の細菌が胃内に棲息でき,その中にはウレアーゼ活性を有する菌もあり,13C-UBTが陽性となる。 H. pylori感染胃炎では除菌後に胃酸分泌が改善するため,H. pylori以外の細菌は棲息しにくいが,AIGでは胃酸分泌は低下したままであり,引き続きウレアーゼ活性陽性細菌が棲息でき,13C-UBTの陽性が継続するため除菌失敗 と判断されて除菌療法が繰り返される,いわゆる“泥沼除菌”状態となるため注意が必要である。 また,もともとH. pylori未感染であってもH. pylori感染診断に13C-UBTを用いた場合は,H. pylori以外のウレアーゼ産生菌によりH. pylori陽性と判断され,“泥沼除菌”に陥りやすい。 |
![]() 穹窿部に固着する粘液
|
当院でも三次除菌以降を目的に来院された方にAIG症例が混在します。慎重な内視鏡検査が必要になります。 胃炎にはA型胃炎とB型胃炎があり、A型は抗胃壁細胞抗体(PCA)陽性の胃炎で別名自己免疫性胃炎(AIG:autoimmune gastritis)、B型胃炎はPCA陰性の胃炎です。 |
![]() 胃体部全体に血管透見像
|
AIGは上部消化管内視鏡検査では胃体部に高度萎縮があるが,前庭部には萎縮を認めない,逆萎縮パターンの胃炎を呈します。(H. pyloriによる慢性胃炎では、炎症が前庭部から胃体部にかけて広がり、全体的に萎縮が見られる。) 壁細胞に存在するプロトンポンプ(H+/K+ATPase)に対する自己抗体PCAが産生されるために壁細胞が破壊され無酸となり,negative feedback mechanismにより高ガストリン血症を呈する病態である。 悪性貧血(胃壁細胞で産生される内因子の分泌低下によりビタミンB12が欠乏し,巨赤芽球性貧血を発症したものを悪性貧血と呼ぶ:原因の良くわからない大球性貧血を時に経験します。 そのなかに、AIGが隠れているのかもしれません。) 胃癌や胃NET(neuroendocrine tumor)の発生母地として知られています。 PCAや抗内因子抗体がその発生に関与することが知られており,他の自己免疫疾患(甲状腺や膵臓など胃外の腺組織の自己免疫疾患)との関連が報告されています(春間賢ほか.日内会誌106;2188-95, 2017)。 また、他部位の悪性腫瘍の発生率が高いことが指摘されており,胃の病変ではあるが,単一臓器ではなく全身疾患として理解する必要があります。 |
![]() 前庭部の輪状模様
|