ストレスがある、心配事がある、眠れないなど心に負担があるときや、生活習慣、とくに食習慣が乱れた時に、腸が過敏になり、けいれんするようになり、下痢、便秘、腹痛、腹部不快感(お腹がすっきりしない感じ)、腹部膨満感(お腹が張る感じ)、ガス症状(お腹がゴロゴロ鳴る)、残便感(便が出きらない感じ)などの症状が出てくる病気です。 腸のレントゲンや内視鏡検査、血液の検査などで悪いところはみつかりません。ときには漢方薬も併用しながら、腸のけいれんを正常にし、腹痛をやわらげるお薬を使います。 必要に応じて便通を整えるお薬や、不安感や抑欝感をやわらげるお薬を使います。 平成16年10月から当院で下痢型過敏性腸症候群の患者様を対象とした多施設共同二重盲検群間比較試験(第三相試験)を行いました(イリボー)。 ストレスなどにより腸の動きが不規則になって、「お通じの回数が増える」「お通じが柔らかくなる」「便意切迫感がある」などの症状を伴う下腹部の痛みあるいは不快感を感じる患者様が対象になります。 この治験薬は厚生労働省が承認して初めて、薬として世の中に出る事が出来ます。 患者様が治験に参加して下さったときに得られる貴重なデータは、将来、同じ病気で悩んでいらっしゃる患者様の治療に役立つことになります。 この治験の結果、下痢型過敏性腸症候群の治療薬イリボーが平成20年10月に発売されました。 また、当院で便秘型過敏性腸症候群の患者様を対象とした多施設共同二重盲検群間比較試験(第三相試験)を行いました(リンゼス)。 慢性的な便秘(硬い便やコロコロとした兎糞状便)で、腹痛や腹部膨満感をともない、女性に多い病気です。 過敏性腸症候群の治療薬リンゼスは平成29年3月22日に発売されました。 IBSの食事療法の一つとして、オーストラリアの研究グループが確認した 「低FODMAP食の有効性に関する研究」が注目されています。 FODMAPとは、fermentable(発酵性)、oligosaccharides(オリゴ糖類)、disaccharides(二糖類)、monosaccharides(単糖類)、and polyols(ポリオール類)の頭文字で構成される略語です。 高FODMAP食はこれらを多く含む食品群であり、小腸内で消化・吸収されにくいため大腸内での発酵が促進されやすいという特徴を持ちます。 これによりIBS症状(膨満感、腹痛)が増悪する可能性があります。 また、別のグループが低FODMAP食とプロバイオティクスの腸内細菌叢への影響を検討した結果「低FODMAP食には、ビフィドバクテリウムを含むプロバイオティクスの併用を考慮するべき」という研究もあります。 腸内細菌とその代謝物は、消化管透過性、粘膜免疫機能、腸管神経系、視床下部−下垂体−副腎系、疼痛制御系、脳機能に対して影響を及ぼすと考えられています。 今後、腸内細菌叢への介入が診断、治療に応用できす可能性も示唆されています。 |
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▲過敏性腸症候群
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